2007年12月17日月曜日

東芝ワープロ特許訴訟事件 3:決意と訴訟費用など


個人が巨大企業と戦う状況は,日露戦争の日本のような位置づけに似ています。写真は,フランスのプチパリジャン紙が日露戦争の日本とロシアを風刺した漫画です。


 ようやく映像化されることが決まった司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」を読んでいると,「男には負けるとわかっていても戦わねばならない時がある」という言葉を思い出します。しかし,負けるわけにはいかないのです。負ければ日本はロシアの植民地と化すことでしょう。それは私も同じことなのです。奪われた名誉は,それを回復しなければ男ではありません。

「坂の上の雲」には次の一節があります。

 日本と日本人は,国際世論のなかではつねに無視されるか,気味悪がられるか,あるいははっきりと嫌悪されるかのどちらかであった。
 たとえばのちに日本が講和において賠償を欲するという意向をあきらかにしたとき,アメリカのある新聞は,

「日本人は人類の血を商売道具にする」 

 という深刻な罵倒をおこなった。日本はこの戦争を通じ,前代未聞なほどに戦時国際法の忠実な遵法者として終始し,戦場として借りている中国側への配慮を十分にし,中国人の土地財宝をおかすことなく,さらにはロシアの捕虜に対しては国家をあげて優遇した。その理由の最大のものは幕末,井伊直弼がむすんだ安政条約という不平等条約を改正してもらいたいというところにあり,ついで精神的な理由として考えられることは,江戸文明以来の倫理性がなお明治期の日本国家で残っていたせいであったろうとおもわれる。
 要するに日本はよき国際習慣を守ろうとし,その姿勢の延長として賠償のことを考えた。
                  中略

 ところが日本はロシアに対して戦勝してその賠償金をとろうとしたとき,

「日本は人類の血を商売道具にし,土地と金を得る目的のために世界の人道を破壊しようとしている」 

 と米紙は極論して攻撃したのである。米紙のいう「人類の血」とは,白人であるロシア人の血のことをさすのであろう。中国などに加えたアジア人の血に対しては欧米の感覚ではどうやら「人類の血」としてはみとめがたいもののようであった。


     -- 司馬遼太郎 「坂の上の雲 7」pp.207-208

なぜ,このような罵倒を米紙が行ったのでしょうか?ルーズベルト大統領は米国の国益を考慮して,日本に好意的であったにもかかわらずです。この裏には次のような事実があったのです。


(駐米ロシア大使)カシニーの世論形成法は,いかにもロシア風であった。米国における新聞という新聞を片っぱしから買収してかかったのである。
 たとえば,ロシアに買収されたワールド紙などは露骨な反日論を掲載した。日本人のことを,「Yellow little monkey」
とよび,日本人がいかに卑劣で,とるにたりない国力しかもっていないかということを書き,日本人はわれわれキリスト教徒の敵である,といったふうの,かつての十字軍時代の布告文をおもわせるような論説まで書いた。


  -- 「坂の上の雲 7」 p.203

特許訴訟費用について
 特許訴訟というものは,個人にとっては莫大とも言える費用がかかります。弁護料には「定価」(目安)があります。数億円の訴訟の場合,着手料金は,約3%+約60万円+消費税です。これに毎回の実費と成功報酬。
加えて,裁判の印紙代(裁判費用)がかかり,これは1億円につき,約30万円です。

 3億円請求では,最初の費用だけで1000万円を越します。
フラッシュメモリーの舛岡氏の10億円の場合,3000万円~4000万円でしょう。舛岡氏の場合,彼の試算では彼の貢献は40億円であり,10億円を遥かに超しますが,初期費用が払えないので一部請求の10億円にしたと書かれています。私の場合,問題は名誉であって金額ではないので,正当な主張もできない守秘義務が有効なあいだ,退職から今年までの3年間の時効分はあえて捨て,また,まだ時効になっていない分も一部請求せず,2年間分の2億6千万程度に抑えてあるのです。和解交渉を決裂させた巨大企業を相手に,一個人がマスコミと社会に対して名誉回復を訴えるにはこのような提訴以外手段がありません。

 なお,弁護士の成功報酬は米国と異なり,つつましく,これも定価で3%程度です。

 着手にこれだけの費用がかかるということは,誰にでも気軽に裁判を起こすことはできないということです。実際に単なる机上の空論で騒がれているほど,このような裁判は起きていません。どれだけの事例が挙げられるか数えてみれば分かります。

 さらに,特許法35条で認めている請求は,通常の利益に対して何%というものではありません。それでは企業に大変な負担がかかる場合もあるでしょう。サラリーマンで言ってみれば月給の何%ではなく,たまたま買って1000万円が当たった宝くじの,その何%というということなのです。そのような大発明が連発して出るような企業は超優良企業で,35条による支払いの為に経営が苦しいというようなことは起きるべくもありません。

 私の場合,これは名誉と技術者の地位向上をかけた戦いなので,この費用支払いに耐えられているのです。名誉はお金には換えられません。日本の武士も西欧の騎士も,名誉のためには命をもかけてきました。とは言いましても,友人からは「老父母を養うお金だけは残しておきなさい」と助言されています。読者もこれは諒としてくださるでしょう。

  すべての困難は諸君が勇気を欠くところから来るのである
                              --アラン

(続く)

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